【開催レポート】TIS競技別セミナー①「サッカー競技におけるスポーツ医科学を用いたパフォーマンス向上〜サッカーを掘り下げよう〜」
「サッカー競技におけるスポーツ医科学を用いたパフォーマンス向上〜サッカーを掘り下げよう」をテーマとして、本センターでは初めてとなる、1つの競技に特化してスポーツ医科学の知見に基づいたセミナーを、9月11日に開催いたしました。
どの競技でも、パフォーマンスを向上させるためには、様々な情報を入手し、有効に活用していく必要がございますが、その情報を入手する機会はなかなかなく、特にサッカー競技に直接的に役立つ情報を適切に取捨選択することは非常に難しい状況にあります。
今回は、サッカー競技に求められる「戦術・技術」「心・技・体」「コンディショニング戦略(医学、栄養、女性特有の課題)」などの情報を1日で提供することを目的として、開催をいたしました。
①サッカー競技におけるスポーツ医科学
講師:菅 和範 様、矢野 雄一郎 様
座長:池田 達昭、島田 真梨子
昨シーズンまで、栃木県を本拠地に置くJリーグチーム栃木SCでキャプテンを務め、2020年に惜しまれながらも引退されました菅 和範 様、栃木SCチームドクターでとちぎメディカルセンターしもつがスポーツ健康科医長の矢野 雄一郎 様をお招きし、菅 様の現役時代のケガ、リハビリなどについてご講演いただきました。
プロ選手としてのケガ、リハビリとの向き合い方、菅 様の現役時代のケガ歴などを記していく「サッカーヘルスメイト」の実物もお持ちいただき、日頃目にすることができない、新たな発見を多くご提供いただきました。
②プロサッカーチームのメディカル体制〜サッカー競技に多い傷害と競技復帰まで〜
講師:矢野 雄一郎 様、山田 誠 様
座長:大島 慶祐
引き続き矢野 様より、栃木SCでのメディカル活動、J2とJ3所属時の選手のケガ率の違いなど、現場で起きている具体的な事象をご講演いただきました。
その後、JリーグチームFC琉球で昨年までコンディショニングコーチを務めていた山田 誠 様に、サッカー競技で多い傷害の紹介や、選手復帰までのプロセスをご講演いただきました。
山田 様は、選手のコンディショニング管理からトレーニング指導、リハビリなど多岐に渡りご活躍されてきたご経験から、プロ選手との信頼関係の築き方なども詳しくご講演いただき、これからプロの世界を目指す方々にとって非常に勉強になる内容になったかと思います。
③選手の心理的競技能力を高めるコミュニケーション
講師:大儀見 浩介 様
座長:松田 堅太郎
プロアマ問わず、多くのサッカー選手へのスポーツメンタルトレーニングをご経験されている、株式会社メンタリスタ代表取締役である大儀見 浩介 様にご講演いただきました。
モチベーションの質を高めるための「心の3大栄養素」や、自己効力感など、ざっくりと「メンタル」と普段は思っているものには、意味があり、科学的にトレーニングできるものであることをご講演いただきました。
「メンタルが強い人」が、科学的にはどのような状態の人なのか、いわゆる「ゾーン」に入るということがどのような状態なのか、など、多くの現場サポートを実施されてきたからこその経験、そしてエビデンスに基づいたお話は、TISのスタッフも非常に勉強させていただけた内容となりました。
④「撮る」、「見る」、「分析」-ゲーム・トレーニング現場で役立つ映像分析アプリ、撮影機器の紹介-」
講師:株式会社ダートフィッシュ・ジャパン 様(ゴールドパートナー)
座長:池田 達昭
本セミナーのゴールドパートナーである、株式会社ダートフィッシュ・ジャパン様に、映像分析についてご紹介いただきました。
「映像分析」と聞くと、「高額な機械を何台も買って・・・」「水泳帽被って上半身裸になって・・・」「観客席で何人かでカメラやパソコン持って・・・」と、難しく考えてしまいがちではありますが、スマートフォンやタブレットを使用し、「映像分析では何がわかるのか」など、実際の撮影方法、フィードバック映像の見え方などを詳しくご講演いただきました。
TISでは、ダートフィッシュ・ジャパン様のソフトを導入し、映像分析のサポートも実施しておりますので、今後ともダートフィッシュ・ジャパン様と協力しながら、アスリートの皆様のパフォーマンス向上にお役立てできるよう精進してまいります。
⑤競技に求められる体力
講師:大塚 慶輔 様
座長:池田 達昭、齋藤 隆行
Jリーグチーム大宮アルディージャなど数多くのJリーグチームでフィジカルコーチを歴任されてきた、大塚 慶輔 様に、サッカー競技に求められる、必要となる体力要素をご講演いただきました。
多くのJリーガーを間近で見られてきたご経験から、何が選手に必要か、フィジカルコーチとしてのアプローチの仕方などを詳しく、現場目線のお話しを頂戴しました。
特に、体力トレーニングの構成として、「スキル系」や「パワー系」などを細かくステップ分けしたトレーニングメニューや、年間のピリオダイゼーションなど、ついつい目先の成果を求めがちなところですが、年間どのようにアプローチをしていくのかなど、プロチーム所属ならではのご講演は非常に見応えがあり、私自身勉強になりました。
⑥ジュニアサッカー選手のためのスポーツ栄養学
講師:鈴木 いづみ 様
座長:亀岡 舞
Jリーグチームを始めオリンピック出場選手のサポートなど、数多くのトップアスリートの栄養指導をされ、現在はJリーグ北海道コンサドーレ札幌トップチームの管理栄養士を務める鈴木 いづみ 様をお招きし、ジュニアサッカー選手や保護者の方が知っておくべきスポーツ栄養学についてご講演いただきました。
1食にどれくらいのご飯を食べると良いのか、毎日、体重を計習慣の大切さや、前の食事から次の食事までの時間など、これから世界に羽ばたくアスリートにとって大変有意義な講演をいただきました。
⑦戦術分析
講師:庄司 悟 様
座長:池田 達昭、大島 慶祐
ドイツなど海外でもサッカーアナリストしてご活躍されてきた、庄司 悟 様をお招きし、ソフトを使用したサッカー競技の戦術分析の方法、ヨーロッパサッカーと日本サッカーの戦術の違いなどを、分析した画面を用いてご講演いただきました。
サッカーの戦術では、よく「4−4−2」などのフォーメーションはよく耳にするかと思いますが、その中でも、実際の映像に「お絵描き」をしながら、攻撃と守備での味方同士の距離、相手との距離、今季のJリーグ全チームのパス成功率などを独自に分析されており、新たな発見ばかりの内容となりました。
⑧回復を促進する栄養補給(リカバリーミール・リカバリースナックについて)
講師:鈴木 いづみ 様
座長:島田 真梨子
引き続き、鈴木 いづみ 様にご講演いただきました。そもそもの、スポーツ栄養学的な「疲労回復」のご説明や、24時間で確実に回復させるための、体重1kgあたりの糖質の必要性、それをどのようなタイミングでどのようなものを摂取すべきなのか、などを具体的にご講演いただきました。
選手はもちろんのこと、選手の食事面などを支える指導者、保護者、コンディショニングトレーナーの方々にとって明日からすぐに現場で実践できる内容となったと思います。
⑨女性アスリートにおける課題について
講師:亀岡 舞
座長:齋藤 隆行
本センター指導員であり、順天堂大学女性スポーツ研究センター開設に参画、S&Cコーチとして女子チームへの指導を長年勤めてきた亀岡 舞が、登壇しました。
現在、公益財団法人栃木県スポーツ協会と共に実施している、「第77回国民体育大会栃木県競技力向上対策本部委託事業 令和3年度女性アスリートサポート事業」でのサポート実績や、採血検査結果データをもとに、本県女性アスリートのリアルな数字をご提示しながら、低容量ピルの使用方法、月経についてなど女性アスリートご本人はもちろんのこと、女性アスリートを指導されている男性の指導者の方も、ぜひ知っておいていただきたい内容をお届けできたかと思います。
以上9つのセッションを、受講者の皆様にお届けいたしました。
最後になりますが、本セミナーを開催するにあたり、ご協賛いただきました、
株式会社ダートフィッシュ・ジャパン 様
株式会社テック技販 様
有限会社エスアンドエムイー 様
酒井医療株式会社 様
ダイナミック・デバイス株式会社 様
大塚製薬株式会社 大宮支店 様
株式会社大橋知創研究所 様
株式会社パフォームベタージャパン 様
昨今の社会情勢の中、ご協賛いただき、誠にありがとうございました。
また、ご後援いただき、本セミナー周知にご協力いただきました、
第77回国民体育大会栃木県競技力向上対策本部 様
栃木県高等学校体育連盟 様
栃木県中学校体育連盟 様
公益社団法人栃木県サッカー協会 様
誠にありがとうございました。
本センターでは、引き続き、アスリートの方のパフォーマンス向上に貢献できるよう、アスリートチェックその他サポートに加え、セミナーを開催してまいりますので、今後とも、本センターのご利用をどうぞよろしくお願いいたします。
令和3年9月14日
とちぎスポーツ医科学センター
センター長 池田 達昭